キーワードエッセイ

新素材

新素材

鈴木 裕治

ランドスケープにおいて材料とは、場を司るツールであり、固いものから柔らかいものまで、五感に訴えかけながら身体感覚に通ずる多様な存在である。その種類も多岐にわたり、場の印象や体験を大きく左右する。

しかし、これらの材料を屋外という過酷な環境下で用いるには、自然にさらされるという前提条件を十分に考慮した上で、材料を選定する必要がある。自然界の素材は分解されて朽ちるという宿命を背負っているため、設計する側はそれを理解しつつ、表現の可能性を期待しながら採用することが求められる。それが材料選びの選択肢を狭める厳しい条件となっている。

自然界に当たり前のようにある石や木などの自然素材はもとより、人類によって新たに開発されてきた人工素材。それはランドスケープに新たな表現の可能性を与えてきた。特にこれまで屋外での使用が難しかった、柔らかいもの、伸びるもの、結合するもの、消えるもの。これらの形容詞の性質をもつ、外での過酷な環境に長く耐えうる素材は少なく、実際は一時的に使用するか、交換しながら維持されてきた。

そのようななかで、技術の進歩によって新しく開発され、注目に値する新素材とは何だろうか? 人工蜘蛛糸繊維やカーボンファイバーに代表される軽量で高強度な柔軟素材。リサイクル材で再生された上に再びリサイクルもできるゴム、ポリエステルやウレタンなどの石油精製素材。3Dプリンタによる工法とABS樹脂や金属、ゴム、モルタルなどの吹付による新しいかたちの成形技術。光触媒などメンテナンス性を高めるコーティング材……。これらの新素材の開発は、その意義とユーザーのニーズの間で目覚ましい進化を遂げ、ランドスケープデザインにおける表現の幅を広げている。とりわけ、インテリアに限定されていた素材が屋外でも応用できるようなってきた点は、注目に値する。

また、循環型社会を目指す現代では、製造過程や設計思想、管理やメンテナンス方法に至るまで、持続可能性を追及していく工夫が求められている。新素材にかけられる期待は大きく、それらの活用によって、ランドスケープデザインの可能性を広げ、単なる仕上げに留まらず、家具などの手に触れることができる新素材の発展に伴って、多様な使い方や、新たな過ごし方の提案もできるようになるだろう。こうした新素材が生み出される可能性に対して常にアンテナを張り、その使い方を模索すること。これもランドスケープデザインにおける重要な姿勢である。

2025年10月31日