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模型

模型

原 行宏

わたしたちは、ランドスケープデザインの過程において、ほぼ必ず模型を製作している。コンセプト模型、スタディ模型、プレゼン模型と目的はさまざまだが、模型はランドスケープデザインの検討と表現において最も有効なツールだと考えている。

まず、ランドスケープデザインの対象敷地大小さまざまであり、特に広大な敷地を扱う場合は、なかなかその全容をつかみにくい。そうした場合に対象敷地全体の模型を製作することで地形やスケール感を把握しやすくなり、デザイン検討に役立つ。また、敷地が小さい場合でも、その周囲を取り巻く環境を視覚的に把握する手段として有効であり、そこからデザインの方向性が導かれることも多い。

近年では、主にCGを用いて検討を行うデザイナーも多いが、広範囲にわたる地形の変化やスケール感、微妙な起伏を把握するには、CGでは限界がある。模型で地形を表現する際には、等高線(コンター)ごとに階段状に製作するのが一般的だが、実際には滑らかな曲面を段状に表現するため、一見すると誤解を招くこともある。しかし、どの部分が同じ高さでつながっているのかを、図面よりも直感的に理解できる。高さ関係を把握することで、たとえばどこに道を通すべきかなども検討しやすくなる。

このように、ランドスケープデザインの過程で製作する模型は、必ずしもリアルさや忠実さを追求するものではない。それよりも対象の何が大事なのか、どのようなコンセプトでどのように手を加えるのかが、わかりやすく表現されていることが大事である。そうした模型を前にしたとき、発注者や将来その場所を担う人々、または周辺住民などを含めたさまざまな関係者から意見を引き出すことができ、その計画への愛着も生まれていると感じる。

ランドスケープデザインは、竣工後もそこを使う人々によって育まれ、よりよくなっていくことが理想である。そのためには関係者全員が同じ土俵に立ってイメージ共有するプロセスが大事であり、模型はそのツールとして非常に有効であると考える。

2025年10月31日