明るく更新された、林にひらく「本の広場」
本プロジェクトは、図書館改修工事の一環として、公園に隣接する敷地内の既存林を、図書館の屋外スペース「本の広場」として再整備したものである。整備前の既存林は、クヌギやエノキといった大木が林冠を広げ、長年手入れが行き届かなかったことから、薄暗さや落枝の懸念があった。一方で、図書館と近隣公園をゆるやかにつなぐ潜在力をもつ、貴重な緑地でもあった。こうした課題と土地の魅力を踏まえ、自然のなかで読書や滞在を楽しめる新たな屋外空間を創出し、図書館の活動が自然と外へ滲み出す風景の実現を目指した。

広場整備にあたっては、既存高木のおよそ半数を間伐し、残された樹木にも枝抜きを施すことで、明るい林環境を確保した。間伐により下層植生にも光が届くようになったことに加え、モミジやヤマボウシなど季節を感じられる樹種を新植し、多層的な植生を形成している。また、近隣住宅に接する部分には常緑樹により緩衝緑地を設け、タイサンボクなど特徴のある樹種を配置することで、住宅と広場側双方の景観を豊かにした。伐採した幹や枝はすべてチップ化し、植物の根元にある土壌を保護するための材料として場内で再利用することで、資源循環にも配慮している。
既存樹木の根を保護しつつ敷地の高低差を解消するため、浮床木デッキによる階段状のテラスを計画した。段状テラスは140mmの階段モジュールを基本とし、図書館フロアレベルから約1.6m下に位置する「読書の森公園」へゆるやかにつながるよう、大小さまざまなテラスを配置している。段差をいかしたベンチやリクライニング型のメッシュベンチ、カウンターテーブル、可動式の置き家具を点在させ、柔らかく区切られたセミプライベートで多様な居場所を生み出した。
さらに、すべての段をスロープでつなぐことで、ベビーカーや車椅子でも利用しやすい動線を確保。視線を妨げる柵類を設けずに安全性を担保するため、地面との高低差を過度に大きくせず、低木の植栽によって段差の視認性を高めた。夜間照明については、既存ポール灯をいかしつつ、照射向きを調整できるボラード灯を段差部分に追加し、近隣住宅への光漏れを抑制している。
この広場が、読書や語らい、親子の読み聞かせなど、訪れた人がそれぞれ心地よい場所を選び、思い思いに過ごすことができる「新たな居場所」として機能することを期待している。














Data

杉並区中央図書館
SUGINAMI CITY CENTRAL LIBRARY
| 竣工 | 2020年6月 |
|---|---|
| 規模 | 5105.39㎡ |
| 住所 | 東京都杉並区荻窪3-40-23 |
| 業務内容 | 基本構想、基本計画、基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | 東京都杉並区 |
| 協働 | 建築:株式会社日総建 写真:吉田 誠 |
| 担当 | 戸田 知佐、田下 祐多、鯨岡 栞(元スタッフ) |
| 受賞歴 | 2024グッドデザイン賞 JIA優秀建築選 2022 日本建築家協会優秀建築選 100作品 |
| メディア掲載 | 『新建築』(株式会社新建築社、2021年3月号) 『ランドスケープ作品選集16』(公益社団法人 日本造園学会、2022年3月号) |
| 参加展示 | グッドデザイン賞受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2024」 2024年11 月 1 日(金)~11 月 5 日(火) 東京ミッドタウン内各所 https://www.g-mark.org/learn/past-awards/gda-2024/gde2024 |
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