
キャンパスは中野の狭小かつ高密度な住宅地に散在しており、いくつかの建物が分散して立地している。このプロジェクトは3つの建物が集積する最も大きな敷地にあり、中央に中庭をもつように各棟が配置された。この中庭が高密度の都心型キャンパスにおいては貴重なオープンスペースとなり、学生/教職員が集い、交流する大事な拠点となる。中庭は立体的な構造を持っており、地下1階の「コートヤード」と2階レベルの「図書館前広場」、そしてそれらを繋ぐ「ステップガーデン」から構成されている。コートヤードは文字通りキャンパスの中心であり、地下一階のレストラン/カフェとそのまま連続している、最も人が集まるパブリックスペース。キャンパス内で最も大きなオープンスペースとなっているため、様々な学内イベント等の主会場としての利用度も高いが、一画にはBBQ コーナーも設けられ、日常的にもゼミやレクリエーションの場としても活用されている。ステップガーデンはブロック状の小さな広場が連続して繋がっており、眼下に大きくコートヤードを望めると同時に、周囲を取り囲む建物もよく見渡せるため、キャンパスの観客席のような位置づけにある。ここに来れば様々なアクティビティが一望できると同時に、来れば誰かに出逢える、学生たちの主動線でもある。小広場の段差は高木の緑陰と相まって至る所に座れる場所を提供し、色分けされた小広場のパターンは段差の視認性を向上させつつ、滞在の場であることと動線であることの両立を目指した結果として導きだされた。更に1番奥まった図書館前広場は表の顔と言うよりは美術/デザイン系の学生たちにとっての作業ヤードとして計画した。中庭はこのようにそれぞれの性格を持ちながら互いに連結されており、狭い敷地の中に出来る限りの「好きに集い、互いの情報を交換し、体験を共有できる空間」が出現する事を願っている。



















Data

東京工芸大学 中野キャンパス
| 竣工 | 2014年3月 |
|---|---|
| 規模 | 7,680.74㎡ |
| 住所 | 東京都中野区 |
| 業務内容 | 基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | 東京工芸大学 |
| 協働 | 建築:坂倉建築研究所 照明:ICE都市環境照明研究所 写真:吉田 誠 |
| 担当 | 長谷川 浩己、野田 亜木子、亀山 本果 |

