風土と時間が育む、工場の森づくり

YKKセンターパーク、健康管理センター

YKK Center Park, Health Management Center
文化時間をデザインする自然環境をつくる広場・公園北陸
日本海に向かってなだらかに広がる黒部平野に、YKK黒部事業所は複数の工場群からなる拠点として位置している。黒部事業所内の工場集約や、事業所正門周辺の市道・県道の拡張工事を契機として、YKK が世界に誇る「顔」となる事業所環境を再整備することを目的に、本プロジェクトは進められた。
YKKセンターパーク、健康管理センター

丸屋根展示館や正門ゲート周辺及び健康管理センター周辺を含む 約30ha のマスタープランは、1990 年代初頭から数度にわたり更新され、2004 年には「森づくり」が大きな目標として掲げられた。計画において求められたのは、YKK の基幹工場として明確な企業メッセージを発信すること、企業の歴史性を踏まえた計画であること、敷地特性をいかした持続可能な環境づくりであること、建設費及び維持管理費用を含めた合理性を確保すること、そして工場としてのセキュリティと企業庭園としての公開性を両立させることであった。

企業イメージを象徴する風景を創出するため、「森づくり」に加えて、大きな空地を「ルーム」として配置するコンセプトを導入した。ルームとは、森のなかに現れる空白の空間であり、各施設と接続することで、人々の多様な活動を受け止めると同時に、森の成長を見てもらいやすくする役割もある。これらを敷地の要所に配置することで、「森」と「ルーム」が織りなす大きな空間構成が形成され、黒部事業所の複数の建築群をつなぐ、統一的な風景が生み出された。

「森づくり」の考え方としては、地域の自然に適した樹種を選定し、人為的な管理を最小限に留め、森の成長の過程が風景として現れる森とする。冬季の乾寒風や砂礫土壌など、高木の育成が難しい環境条件を踏まえ、苗木を中心とした植栽とした。また、黒部川の扇状地に位置する敷地は地下水位が高く、植生が制限される土地である。水はけを改善するために、畝(うね)型やマウンド型などさまざまな土の造形が試みられた。これらの造形に必要な土を確保するため池を掘削し、湧水をいかした水辺環境を整備した結果、敷地内には2つの大きな池が生まれ、多様な生物の生息地となっている。

こうして生まれた広大な緑地は常時地域に開放され、近隣住民にとっても憩いの空間となっている。企業と地域、そして従業員が共生し、歳月とともに多様な表情を育んでいく「企業庭園」が実現し、現在もその風景は更新され続けている。

正門ゲート周辺のルームと丸屋根展示館。
敷地特性をいかした持続可能な環境づくり。
湧水をいかして整備した水辺環境は、多様な生物の生息地となっている。
広大な緑地は地域に開放され、近隣住民の憩いの空間となっている。

ルームの立断面図。

Data

YKKセンターパーク、健康管理センター

YKKセンターパーク、健康管理センター

YKK Center Park, Health Management Center
竣工2008年9月
規模センターパーク80,000㎡、健康管理センター48,000㎡
住所富山県黒部市吉田200
業務内容 マスタープラン、基本設計、実施設計、設計監理
施主YKK株式会社
協働建築:大野 秀敏+吉田 明弘(株式会社アプルデザインワークショップ)
電気・機械設備:黒部エムテック株式会社
植栽監修:長井 真隆
写真:吉田 誠、有限会社オンサイト計画設計事務所
担当三谷 徹、戸田 知佐、鈴木 千穂(元スタッフ)、原 行宏、廣松 奈美子(元スタッフ)
受賞歴2009年度グッドデザイン賞
土木学会デザイン賞2011奨励賞
IFLA ASIA-PAC LA Awards 2023 AWARD OF EXCELLENCE(CATEGORY: Built Projects-Nature Conservation)
メディア掲載『新建築』(新建築社、2009年1月号)
『日経コンストラクション』(日経BP、2009年9月25日号)
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