建築と周辺環境を媒介する「間」のランドスケープ

深圳海上世界文化芸術中心

Shenzhen Sea World Culture and Arts Center
文化まちづくり水辺広場・公園海外
深圳海上世界文化芸術中心は、深圳市西部の蛇口半島に位置する「海上世界」と呼ばれるエリアにつくられた文化施設である。ここは、中国で最も歴史の長い不動産開発企業によって数十年前から開発されてきた地区であり、その地域の核となる複合文化施設として、美術館や商業施設を一体的にまとめるように計画された。建築設計は、中国での初めてのプロジェクトとなる槇総合計画事務所が設計している。隣接する女神公園はアメリカの「AECOM」によって設計された曲線的な造形が特徴の公園であり、槇文彦氏のモダニズム建築との関係性や、公園と並行して通る既存の都市軸を計画に取り込むことが求められた。
深圳海上世界文化芸術中心

建築は、南東側の蛇口湾に面して施設の文化的性格を象徴するため、敷地のコンテクストとなる山・海・公園の3方向に対して強いつながりを示唆するパビリオンが、基壇状の建築の上部に展開する構成となっている。この彫刻的な形態をより象徴的に見せると同時に、女神公園や海といった周辺環境との良好な関係性を生み出すため、ランドスケープでは「間」を設けることを提案した。「間」を構成する主な要素として、北東側に、折り目をもつ芝生のアースワークによるグリーンプレートが配置されている。これにより建築からの引きが生まれ、建築の形態を際立たせると同時に、さまざまな角度から施設を眺めたり、イベントを開催したりできる空間となった。グリーンプレートの女神公園側には、有機的な線形と呼応する高木の並木を設け、その下には滞在可能なグリーンテラスやグリーンプラザといった人の居場所を配置した。グリーンプレートの地下には駐車場が設けられ、地上出口はアースワークのなかのフォリー(風景のアクセントとなる東屋)として認識されるように計画されている。

グリーンプレートは建築の構成に応じてその様相を変える。まちとつながるエントランス部では人の動きを導きの涼やかなカスケード(小さな滝)を設置。蛇口湾側では人々を水際へゆるやかに誘導し、海を眺めることのできる段々状のベイサイドテラスを設けた。また、基壇状になった建築の屋上には、来訪者が自由に散策できる「ルーフプラザ」が設けられ、建築内外を横断する回遊性が生み出されている。

この場所では、本来は対象物と距離を取る空白として機能する「間」が、ランドスケープの構成主体となり、建築や周辺環境とのつながりをつくっている。来訪者は散策するようにランドスケープをめぐり、自分の好きな居場所を見つけたり、偶発的に文化やアートと出会ったりする。こうした体験を通じて、日常的に利用する機会をつくり出し、人々を呼び込みながら、このエリアのさまざまな活動を内包する施設として、文化と芸術の発展に寄与することが意図されている。

芝生のアースワークによるグリーンプレート。奥に女神公園。
エントランス部にあるカスケード。
海を眺めることのできる段々状のベイサイドテラス。

Data

深圳海上世界文化芸術中心

深圳海上世界文化芸術中心

Shenzhen Sea World Culture and Arts Center
竣工2017年11月
規模26,151.61㎡
住所中国深圳市蛇口望海路1187号
業務内容 基本設計、実施設計、設計監理
施主中国招商局
協働建築:槇総合計画事務所
構造:Arup
担当三谷 徹、戸田 知佐、須貝 敏如(元スタッフ)、本田 亮吾、橋内 智也(元スタッフ)、小林 海子(元スタッフ)
メディア掲載『新建築』(新建築社、2018年1月号)

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