
放送局の建物を新築したあとに残されたその中庭には高さ10mにもなるソメイヨシノが3本残され、地面は裸の土が露出していた。建築のエントランスを入るとすぐ正面のガラス窓を通して望める場所に中庭が残されていたため、フォーマルでかつ、社員の憩いの場になるような空間づくりをクライアントからは、期待された。
高松の漁港ではよく見られる蛸壺からヒントを得た「壺」を庭にグリッド状にならべる庭のデザインを提案した。特注で注文したその信楽焼の壺は、地面から30mm程うかせて床に据え付けられた。壺の下の地面は小叩きとビシャンで仕上げられたサクラ御影で覆われており、石の隙間には小さな砂利やタマスダレなどの草本類が植栽された。大きなソメイヨシノに覆われ、早朝に少し木漏れ日が入る程度の庭に桜色の床と朱色の壺は明るさを呼び込む。また、藪蚊の多いこの庭では、壺は蚊取り線香をたく香炉としても利用されることが期待された。



















Data

瀬戸内海放送本社庭園
TV Setonaikai Garden
| 竣工 | 1999年 |
|---|---|
| 規模 | 400㎡ |
| 住所 | 香川県 |
| 業務内容 | 基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | 瀬戸内海放送 |
| 担当 | 三谷 徹、戸田 知佐、廣松 奈美子(元所員) |

