大阪にそびえる天空の庭

あべのハルカス屋上庭園

Rooftops of Abeno Harukas
ビジネス・商業居場所をつくる都市屋上近畿
本プロジェクトは、大阪府大阪市阿倍野区に立つ日本一の超高層ビル「あべのハルカス」に、天空の庭を設える計画である。上階は地上約300mという特別な立地条件のもと、16階、38階、58階の3か所に屋上庭園を配置し、買い物客や展望台の来訪者が都市の中心で自然を身近に感じられる場をつくることを目指した。ビルへの風の影響を減らすため、階段状のセットバックによって生まれた3つのテラス空間を屋上庭園として整備し、立体的に都市の緑をつないでいる。
あべのハルカス屋上庭園

デザインの核としているのは、「高さが変われば風景も変わる」という考え方である。周辺に広がる天王寺公園の緑を建物の上へと持ち上げつつ、階ごとに異なる自然の表情を設定した。16階は四季の移ろいを感じる「里山」、38階は風が抜ける「高原」、58階は澄んだ空気を思わせる「山頂」をイメージした。高木を用いることで頭上の枝葉がつくる木漏れ日や、都市の眺望に緑が重なる浮遊感を体験できるようにした。

植栽は樹種を丁寧に選び分けて計画されている。58階の屋外庭園では、常緑で高さ約5mのシラカシを中心に選び、空へ抜けるような景色を演出した。最も風の強い38階では、風に強いアラカシを高木として採用し、足元にはオカメザサをストライプ状に配置することで、風が通り抜ける高原の雰囲気を強調している。16階では、多様性と季節感を重視し、外側にシラカシやアラカシといった常緑樹を並べ、建物側にはケヤキやイタヤカエデなどの落葉樹を配置。さらに足元には、人工大理石を用いた造形的なベンチで居場所をつくり、その周囲にオオムラサキツツジを添えることで、季節変化のある景観とそこに佇む場を生み出している。 

一方、超高層に樹木を植えるうえで最大の課題となったのが風害である。特に16階と38階は、横風に加えて上層階からの吹き下ろしも強く、枝折れや飛散のリスクが大きい。そこでまず、各階の外周に階高と同じ67mの合わせガラス製防風スクリーンを設置し、風を和らげる空間を確保した。続いて、候補となる樹種それぞれの枝を直接引っ張る耐力試験を行い、枝葉がどの程度の風に耐えられるかを検証。さらに風洞実験で各地点の風速を把握し、計算結果と照らし合わせながら、安全に育つ樹種を選定している。

維持管理の方法についても、あらかじめ運用ルールを定めた。防風スクリーンを超えて枝が伸びないように年12回の剪定を行い、枯れ枝が確認された場合には速やかに取り除くなど、長期にわたって安心して利用できる庭園を目指している。こうした細かな技術的検討とデザインによって、都市の上空にありながら、人々が自然の気配や季節の変化を確かに感じられる、新しいランドスケープが実現している。

「里山」をイメージした16階の屋上庭園。
外側にシラカシやアラカシなどの常緑樹、建物側にはケヤキやイタヤカエデなどの落葉樹を配置。
38階は風が抜ける「高原」のイメージ。風に強いアラカシと足元にはオカメザサを採用。
「山頂」をイメージした58階。都市の眺望に緑が重なる浮遊感を体験できる。
 

Data

あべのハルカス屋上庭園

あべのハルカス屋上庭園

Rooftops of Abeno Harukas
竣工2014年3月
規模2,964㎡
住所大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
業務内容 基本計画、基本設計、実施設計監修、意匠監理監修
施主近鉄不動産株式会社
協働建築・施工:株式会社竹中工務店
外装デザイン:Pelli Clarke & Partners Japan, Inc.
照明:ぼんぼり光環境設計株式会社
サイン:株式会社廣村デザイン事務所
写真:株式会社竹中工務店、オンサイト計画設計事務所
担当三谷 徹、鈴木 裕治
受賞歴受賞歴:2017年度グッドデザイン賞
第56回BCS賞(2015年)
第17回JIA環境建築賞 優秀賞(2016年度)
第14回屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール 屋上緑化部門 都市緑化機構会長賞(2015年)
第35回大阪都市景観建築賞 大阪市長賞(2015年)
メディア掲載『日経アーキテクチュア』(日経BP社、2014年5月10日号)
『建築作品選集』(建築学会、2016年)
『商店建築』(商店建築社、2014年5月号)
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