都市に「緑」を編み込む、新しい日常の広場
横浜・みなとみらい21地区には、「キング軸」「クイーン軸」「グランモール軸」と呼ばれる3つの歩行者空間がある。「横浜グランゲート」は、横浜駅方面から海へ向かう「キング軸」と、桜木町駅方面からの「クイーン軸」と「キング軸」をつなぐ「グランモール軸」が交差する要所に位置する複合ビルである。周囲には、横浜駅や新高島駅といった主要交通拠点に隣接し、高島中央公園や美術館、高層住宅、商業施設がある。ビジネス・文化・生活が混じり合うこの地において、日常的に使うことができる空間として、自然に人が集まる場を目指した。

本計画のコンセプトは、「緑のなかにヒューマンスケールの広場を埋め込む」というもの。一般の車両通行を制限し、歩行者や自転車を優先するスーパーブロック内において、敷地内の約2.5mの高低差をいかし、中央にすり鉢状の広場を配置。その広場を囲む階段席を設けることで、自然な高低差が人々の視線や動線を誘導し、さまざまな居場所を生み出している。
この空間は、キング軸に沿って形成される「緑の軸」の一部として、人々がただ通過するだけでなく、滞在もできる場所として設計され、「緑を主体とした歩行と滞在が両立する空間」としてのあり方を模索した。敷地全体には、多様な高木や低木、地被類が重なり合い、雑木林のような奥行きと季節感に富んだ風景が広がる。植栽は、この地域の潜在植生をベースに、横浜の臨海部に適した樹種を加え、サクラ、ヤマボウシ、モミジなど四季の変化を感じられる樹種を選定。緑陰のなかにアウトドアラウンジやワーキングスペース、店舗と連動するテラスなどを点在させ、建築とランドスケープが一体となった都市の過ごし方を提案している。
横浜の繁華街にありながら、この場所に足を踏み入れると、自然に包まれた静けさとやわらかな時間の流れを感じることができる。木陰に設けられたベンチでコーヒーを飲みながら一息つくワーカーや、広場の階段で遊びながら季節の植栽を楽しむ親子の姿など、都市の日常に溶け込むさまざまな風景が生まれた。高低差によってゆるやかに空間が切り替わることで、ちょっとした立ち話や木漏れ日の下での読書、ランチタイムの気分転換など、そのときの気分に応じて場所を選ぶことができる。四季のうつろいを感じられ、常に表情を変える風景が人々の記憶に残る。















Data

横浜グランゲート
YOKOHAMA GRANGATE
| 竣工 | 2020年2月 |
|---|---|
| 規模 | 敷地面積13,503.78 ㎡ |
| 住所 | 神奈川県横浜市西区みなとみらい5-1-1 |
| 業務内容 | 基本設計、実施設計、設計管理協力 |
| 施主 | 清水建設株式会社 |
| 協働 | 建築:清水建設株式会社 照明:有限会社ライトデザイン 写真:吉田 誠 |
| 担当 | 長谷川 浩己、鈴木 裕治、田下 祐多、前田 智代 |
| 受賞歴 | 2021年度グッドデザイン賞 |
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