水田風景を再編した地域創生拠点

ショウナイホテルスイデンテラス/キッズドームソライ

SUIDEN TERRASSE / KIDS DOME SORAI
ホテル・リゾート緑のかたち農村東北
「ショウナイホテル スイデンテラス」は、水田の上に浮かぶホテルで、その一部には児童教育施設「キッズドームソライ」が併設されている。山形県鶴岡市のサイエンスパーク内、庄内平野の水田地帯に広がる約14haの敷地に位置する。2014年、未利用だったサイエンスパーク用地の有効活用を目的に、ヤマガタデザイン(現・株式会社SHONAI)によってプロジェクトが始動された。地域創生の核となる宿泊施設、および地域子育て支援施設として、外部からの来訪者だけではなく、地元住民も楽しむことができ、両者の交流が深まるような拠点づくりを目指している。
ショウナイホテルスイデンテラス/キッズドームソライ

着工前の敷地は、水田が一面に広がる開放的な風景が特徴的であった。ランドスケープデザインにおいては、この広がる水田という立地特性をいかし、「既存の水田システムの再構築」をコンセプトに掲げた。既存の水田景観を壊すことなく、その魅力を最大限に引き出す景観設計を目指した。設計にあたっては、山形県内各地の水田のフィールドワークを重ね、稲作の風景を継承するため、まずは農耕地の詳細な調査を実施。屋敷林や防風柵、用水路と排水路、畔(あぜ)の仕様など、さまざまな農耕のディテールを収集・再編し、デザイン要素として取り入れている。

計画当初、この土地の水田は暗渠(あんきょ)による用水で水の流れが見えない状況だったが、水の流れを可視化し、水音が聞こえることで水田の仕組みを体感できる風景づくりを目指した。水田用水には、空調などで使用された用水を再利用し、井水の吐水口はホテルのエントランスからガラス越しに見える位置に水盤として設け、来訪者を迎えている。さらに、この地域特有の季節風から建築を守るために屋敷林と防風フェンスを設置し、混交林と多様な樹種構成、湛水地(たんすいち)によって、水田周辺の生物多様性を担保することを目指した。

現在は、季節ごとに水田には耕耘機とトラクターが入り、代掻(しろか)き整備が行われている。月山・羽黒山・湯殿山を望む宿泊棟の窓からは、ときおり水田を往来する耕作機の様子が目に入り、豊かな水田のランドスケープを楽しむことができる。

Data

ショウナイホテルスイデンテラス/キッズドームソライ

ショウナイホテルスイデンテラス/キッズドームソライ

SUIDEN TERRASSE / KIDS DOME SORAI
竣工2018年9月
規模34,591.98 ㎡ ( スイデンテラス ) 、 14,401.46 ㎡ ( ソライ )
住所山形県鶴岡市北京田宇下烏 ノ 巣 23-1 ( スイデンテラス )
業務内容 基本計画、基本設計、実施設計、設計監理
施主YAMAGATA DESIGN株式会社(現・株式会社SHONAI)
協働建築:株式会社坂茂建築設計
構造:Ove Arup & Partners International Limited
照明:岩井達弥光景デザイン
サイン:株式会社矢作喜從郎建築計画
機械設備:Ove Arup & Partners International Limited
写真:吉田 誠、オンサイト計画設計事務所
担当三谷 徹、鈴木 裕治、中村 智子、上田 啓司、小林 海子(元スタッフ)、金井 幸雄(カナデ設計事務所)
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