ひとりでも誰かとでもくつろげる、まちの縁側

釜石市大町広場

KAMAISHI OMACHI HIROBA
ビジネス・商業まちづくり広場・公園東北
「釜石大町広場」は、岩手県釜石市の海沿いの中心市街地に計画された公共の広場である。釜石市は、2011年の東日本大震災で発生した津波によって、沿岸の市街地が甚大な被害を受けた。市は釜石東部地区復興計画の一環として3つのフロントプロジェクトを立ち上げ、その第1弾としてまちににぎわいをもたらす「商業と賑わいの拠点整備」を掲げ、中心部に商業・文化・情報交流の拠点づくりを進めてきた。
釜石市大町広場

わたしたちは、その拠点の一部である釜石大町広場の計画・設計を担うこととなった。釜石大町広場は、まちのかつて最も賑わっていた大通り(旧・釜石港線)から、新たに整備される大型商業施設を中心とした商業ゾーンへの歩行者動線として「ストリート型の広場」の南側のエリアとして計画された。このストリート型の広場は、同時に整備される市民ホールやタウンポート大町などの公共・商業施設にも隣接し、広場はにぎわいを生む施設群をつなぐハブとしての役割も期待されている。

まちににぎわいをつくるために広場がどうあるべきか考えたとき、日常的に人の姿があることが重要ではないだろうか。そこで、ひとりでも、誰かとでもそこに佇めるような、まちなかを移動するためだけの空間ではなく、ふと立ちどまってくつろげる「まちの縁側」として楽しめるような広場を目指した。

広場は、芝生広場とそれを囲うウッドデッキ、そして5つの東屋で構成されている。市民からの要望が多くあったイベントの会場となる芝生広場を中央に配置し、いかに日常的に人がいられる場所をつくるかを重視して、その周りをさまざまな「居場所」で囲うように計画した。芝生を囲う2色のウッドデッキは、階段の蹴上げ程度の低い段差でミルフィーユのように積み重ねられ、それらがズレたり重なったりすることで階段やベンチ、ときには観客席としても機能する自由度の高い空間をデザインした。芝生広場を介して周辺に点々と居場所を設けることで、それぞれの人が自分の時間を過ごしながらお互いの存在を認め合い、同じ空間を共有する。そんな「ひとりでも誰かといられるコモン空間」をつくり出している。

Data

釜石市大町広場

釜石市大町広場

KAMAISHI OMACHI HIROBA
竣工2015年7月
規模2,300㎡
住所岩手県釜石市大町1-2-8
業務内容 基本設計、実施設計、設計監理
施主釜石市
協働土木:株式会社建設技術研究所
構造:株式会社リズムデザイン=モヴ一級建築士事務所
照明:ぼんぼり光環境計画株式会社
写真:吉田 誠、釜石市
担当長谷川 浩己、丹野 麗子、中村 智子
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