地域の歴史が継承された、水と緑の織りなす駅前広場

虎渓用水広場

KOKEIYOSUI SQUARE
風景のなかの屋根水辺広場・公園中部
「虎渓用水(こけいようすい)広場」は、岐阜県JR多治見駅北口に位置し、駅北地区の土地区画整理事業に合わせて駅正面に整備された広場である。虎渓用水は、明治時代に土岐川から水を引き込み、地域住民の生活を支える重要な用水として利用されていたが、宅地化が進んだことにより、上部が歩道などに転用され、暗渠(あんきょ)となっていた。しかし、虎渓用水に愛着のある住民が多くいたため、地域の重要な資源として再評価され、虎渓用水を新たに駅前広場に引き込み、活用することにつながった。
虎渓用水広場

虎渓用水広場の再整備では、「いつでも魅力的で立ち寄りたくなる場所」を目指し、「日常時でもイベント時でもいろいろな使い方ができるいつも活気ある場所」「水と緑が重なり合い気持ちのいい居場所」「ほかのどのまちにもないここだけの駅前風景」などの目標が掲げられた。こうした方針の策定には、行政・市民団体・ランドスケープアーキテクトによる官民連携の組織が結成され、地域住民との意見交換やワークショップなど参加型プロセスが導入された。丁寧な対話と検証を重ねたことで、地域固有の魅力が引き出され、整備に留まらない価値創出へとつながった。

全体的な地形はすり鉢状に掘り下げられており、駅を含むあらゆる方向から広場全体を見渡すことのできる構成となっている。これによって、周囲から広場のにぎわいを感じられ、人々が自然と広場へ誘い込まれるような仕組みが生まれた。すり鉢状の地形内をめぐる水路は園路(庭や公園内の歩行者用通路)から近い高さに設定され、水が落ちる仕掛けを設けることで、心地よい水音が響く、憩いの居場所となっている。

東屋のあるテラスや小広場、園路などの要素は、水路と相互に干渉し合うように設計され、どこにいても水の気配が感じられる。テラスは、日常的にランチや打ち合わせ、勉強などに使われ、イベント時にはビアガーデンの会場となるなど、さまざまな場面に対応する「公共の居間」となっている。

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Data

虎渓用水広場

虎渓用水広場

KOKEIYOSUI SQUARE
竣工2016年6月
規模3,657㎡
住所岐阜県多治見市音羽町1丁目地内
業務内容 基本設計、実施設計、設計監理
施主多治見市
協働建築:エルケーデザインオフィス
土木:玉野総合コンサルタント株式会社
構造:リズムデザイン=モブ
照明:ICE都市環境照明研究所
サイン:岩松 亮太
電気設備:玉野総合コンサルタント株式会社
環境・社会調査:玉野総合コンサルタント株式会社
写真:吉田 誠、多治見まちづくり株式会社、有限会社オンサイト計画設計事務所
担当長谷川 浩己、丹野 麗子、亀山 本果(元スタッフ)、落合 洋介
受賞歴LANDSCAPE ARCHITECTURE AWARDS 2023 OUTSTANDING AWARD
2020年度グッドデザイン賞 グッドフォーカス賞(地域社会デザイン)
土木学会デザイン賞 優秀賞 (2020年)
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