
この池は、およそ70年前にスケートリンクとして整備されたが、一時休止しており、2016年に新たに再生することになった。その背景には、スケートリンクの再開によってエリアの魅力を高めるとともに、池の生態系を保全するという目的があった。管理は自然保護活動団体「ピッキオ」が担うことになり、その施設移転も併せて計画され、新たなビジターセンターはネイチャーツアーの拠点としても機能している。
本計画では「森のスケートリンク」という新たなコンセプトのもと、森のなかを滑る爽快感を生み出すスケートリンクをデザインした。また、星野エリアでは、湯川沿いにある商業施設群「ハルニレテラス」から野鳥の森までを結ぶ遊歩道を整備し、全長1kmの長さをつなげることができた。遊歩道はビジターセンターと一体的にデザインされており、池をやわらかく蛇行しながら縁取っている。遊歩道を進んで行くと、展望テラスから浅間山の雄大な姿を目にすることができる。
遊歩道は池の縁に沿って蛇行し、水際にせり出した部分は、冬にはリンクの縁に腰掛けられるベンチとしても利用できる。かたや遊歩道が池から離れていくと、その間の水際は生物のすみかとなるようにした。また、池の周囲にはベンチを点在させ、緑のなかで過ごせる居場所をつくり出した。池が凍ったときにだけ座ることができるベンチもある。スケートリンクには柵を設けず、ベンチや遊歩道を手すりの代わりとして活用することで、自然景観との調和を重視した。
スケートリンクは、人工結氷エリアと自然結氷エリアを設けることで、オープン期間を延ばし、季節に応じた段階的な利用が可能となっている。また、生物多様性を維持するために、冬でも生物が棲息できる環境づくりも行った。たとえば、水の流れをコントロールする堰(せき)を設けた冬でも流れる水路や、水棲生物が越冬できるように池底に起伏をつけるなどの工夫を施した。ケラ池は、生き物が旺盛な季節は自然に場を返し、生き物が眠りにつく冬には、人の遊び場として自然から間借りするという、自然と人の関係性をかたちにしている。














Data

ケラ池スケートリンク
| 竣工 | 2016年7月 |
|---|---|
| 規模 | 3,181.7㎡ |
| 住所 | 長野県北佐久郡軽井沢町長倉2148 |
| 業務内容 | 基本計画、基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | 株式会社星野リゾート |
| 協働 | 建築:Klein Dytham architecture 土木:株式会社サココンサルタント 構造:株式会社KAP一級建築士事務所 照明:有限会社ICE都市環境照明研究所 電気設備:タクトコンフォート株式会社 機械設備:ジーエヌ設備計画 写真:吉田 誠、Klein Dytham architecture、有限会社オンサイト計画設計事務所 |
| 担当 | 長谷川 浩己、鈴木 裕治、中村 智子、前田 智代、金井 幸雄(カナデ設計事務所) |
| 受賞歴 | 日本造園学会『ランドスケープ作品選集2018』 |
| 関連リンク |

