水の気配に満ちる山の庭

星のやグーグァン

HOSHINOYA Guguan
ホテル・リゾート風景のなかの屋根海外
台湾・谷關(グーグァン)は、3,000m級の山々が連なる雪山山脈を、大甲渓という河川が侵食して形成した谷間に位置する温泉地である。1907(明治40)年、原住民族であるタイヤル族によって発見された温泉は、豊かな自然に包まれた温泉保養地として長く親しまれてきた。
星のやグーグァン

「星のやグーグァン」は、谷關温泉郷の中心街から一段高い、切り立った台地に佇む。周囲は蛇行する川と静かな森に囲まれ、敷地内には樹齢100年を超える林が立ち並び、地下には豊富な湧水と温泉が眠っている。この地に、星野リゾートが台湾で初めて手がける温泉リゾートとして、日本の温泉文化を基軸に、現地の自然環境や文化と調和するランドスケープを計画した。

コンセプトは、「水の気配に満ちる山の庭」。敷地中央の既存林エリアを「水の庭」として再編し、敷地全体を水の気配に満ちた山上の庭園として設えることを考案した。周囲の山々から湧き出る水は、露天風呂の奥の壁泉(へきせん)やスパ前の池、水路など、さまざまに姿を変えながら敷地内をめぐり、最終的に水の庭へと注ぎ込まれる。この構成により、水の流れが視覚的・聴覚的に連続する環境が生まれ、どこにいても水の気配に包まれ、自然と一体化したかのような体験ができる。日本の設計チームと台湾の施工チームが連携し、文化的背景や気候風土を読み解きながら、自然資源を最大限にいかし、ゲストが五感を通して自然を感じられる空間を目指した。

水の庭を中心に、客室棟、温泉棟、レストラン棟、プールなどの機能を囲むように配置し、回遊性を確保。水路は林の合間をうねるように流れ、幅の広い部分では周囲の木立や空を大きく映し込む水鏡となる。水面と地盤の高さの差を極力抑えることで、林床と水面が一体化し、木々が水に浮かんでいるかのような視覚効果を生み出している。さらに、林間に小径をめぐらせることで、ゲストが水音と木漏れ日のなかを自由に散策できるようにした。

プールと露天風呂もまた、滞在空間に水音や光の表情を加えている。プールは敷地中央に位置し、わずかに高い水面が林との対比を際立たせ、庭に光のアクセントをもたらした。露天風呂はジグザグと縦長に伸びる形状で、訪れた人を最奥の壁泉へと誘い込む。一度お湯に浸かれば、緑の森に沈み込むようなおだやかさを感じられるだろう。湯船のへりには庵治(あじ)石による石組みを施し、水面に自然な映り込みを演出するとともに、入浴時の背もたれとしても機能する。明るい陽光の下や木立のなか、水路の際などに点在するガゼボ(東屋)は、雨の多い気候のもとでも、自然に包まれた、ゆったりとした時間を楽しめるようになっている。

Data

星のやグーグァン

星のやグーグァン

HOSHINOYA Guguan
竣工2018年11月
規模18,909㎡(建築面積:4,401.71㎡)
住所424 台湾台中市和平区博愛里東關路一段温泉巷16号
業務内容 基本計画、基本設計、実施設計、設計監理
施主株式会社星野リゾート(開発・運営)、汶山企業〇〇有限公司(事業主)
協働建築:東環境・建築研究所
照明:ICE都市環境照明研究所
電気設備:タクトコンフォート株式会社
機械設備:ジーエヌ設備計画
ローカルアーキテクト:半畝塘聡合建築師事務所
ランドスケープ・ローカルアーキテクト:老圃造園工程〇〇有限公司
石組:株式会社和泉屋石材店
写真:吉田 誠
担当長谷川 浩己、鈴木 裕治、須貝 敏如(元スタッフ)、張 立(元スタッフ)、小林 海子(元スタッフ)、鈴木 千穂(SEA BASS)小竹良 恵(fieldwork)
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