
このプロジェクトでは、まち並みに対するパブリックスペースの充実が当初より目標であり、ランドスケープデザインがその鍵を握った。高容積の建築ボリュームが敷地を占めるなか、広場と建築を組み合わせた配置によってまち並みを構成し、敷地境界沿いの隙間空間を演出するということが求められた。
まず重視したのは、広場の構成である。建築ボリュームを千鳥に配置することにより、3つの広場が計画され、既存街区のなかに地区動線となる大きなパブリックの「ひだ」をつくり出した。駅前からのアプローチをつかさどるフォーマルな広場と、勉強室や食堂に囲まれる中庭型の中央広場、そして、住宅区と接する緑陰型の広場である。広場は、まちの人々の生活動線を確保するとともに、市民生活の場としても機能するようデザインされ、大学のあり方を象徴する風景をつくり出す。まちや大学のイベントなどさまざまな活用を想定した広場の床は、職人の手仕事が感じられる石畳とされ、広場空間に存在感を持たせている。「まちの人々とともにありたい」という大学の意思が、日本の都市型キャンパスの風景をつくり出している。
一方で、建築ボリュームが敷地境界に迫り、さらに高い緑化率と高木本数が求められたため、その狭小空間を植栽で隠された建物の裏側と感じさせない設えが必要であった。それを解決したのが、小さなパブリックの「ひだ」となる、植栽とファニチャーを一体化した「グリーンファニチャー」の空間である。
植栽をベンチやテーブル、サイン、照明器具などと一体的にデザインし、緑と施設が合体したまち並み要素となることを目論んでいる。これにより建築壁面と歩道にはさまれた3〜6mほどの空間に、人と緑が織りなす奥行きが生み出され、学生や近隣住民に利用されている。グリーンファニチャーは、屋上テラスにも展開され、芝生斜面と一体化した大テーブルや植栽に囲まれた学習スペースなど、学生にさまざまな居場所を提供している。
ややもすると無表情で巨大な箱になりやすい高容積建築の足元に、建築内外をつなぐ中間領域を創り出し、人の居場所をつくることで、大学とまちのつながりが生まれた。大学図書館脇の緑地で通学中の小学生が本を読み、近隣の保育園が幼児を広場に連れてきて遊ばせている。そのようなまちの息吹が感じられる大学の可能性を見せてくれたプロジェクトである。



















Data

東京電機大学 東京千住キャンパス
| 竣工 | 2012年1月 |
|---|---|
| 規模 | 19,960.93㎡ |
| 住所 | 東京都足立区北住旭町5 |
| 業務内容 | 基本計画、基本設計、実施設計、設計管理協力 |
| 施主 | 東京電機大学 |
| 協働 | 建築:株式会社槇総合計画事務所 構造:株式会社日建設計 照明:有限会社サワダライティングデザイン&アナリシス 運営・マネジメント: 写真:吉田 誠、有限会社オンサイト計画設計事務所 |
| 担当 | 三谷 徹、鈴木 裕治、金井 幸雄(元スタッフ)、亀山 本果(元スタッフ)、佐藤裕(監理協力) |
| メディア掲載 | 『LANDSCAPE DESIGN No.94』(マルモ出版、2014年2月号) 『世界园林 WORLDSCAPE No.2』(中国林业出版社、2013年) 『新建築』(株式会社新建築社、2012年7月号) |
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