震災を機に、集い、未来を考える場所をつくる

箱根山テラスは、地域の交流拠点としての宿泊・滞在施設である。岩手県陸前高田市のシンボルとも言える箱根山中腹に位置し、眼下に広田湾を望む斜面地にある。東日本大震災によって市街地は津波による甚大な被害を受け、その後、大規模な造成や防潮堤の工事で重機や巨大なベルトコンベアが稼働する荒涼とした風景が広がっていた。そこで地元の民間企業の有志が立ち上がり、計画したのが、このプロジェクトである。焦燥や不安から身を引き、静かな森のなかで、みなが故郷の海を眺めながら一息ついて集まれる場所をつくることを目指した。
箱根山テラス

それぞれが自分の会社の存続や立て直しに走らざるを得ないなか、非常に限られた予算をいかに効果的に使うか、さまざまなプランやオプションが考えられ、検討された。そのなかでも最後まで必要不可欠とされ残ったのが、長さ50mに及ぶデッキテラスである。カフェ棟や宿泊棟を結び斜面に沿って、船の甲板のように大きく伸びるテラスは、計画当初からの合言葉「山に船を浮かべる」そのものであり、施設名の由来にもなっている。民間施設でありながら誰でも来られる場所、自分だけのスペースを見つけ、また他者と交流できる場所。そういった場が生まれることを、関係者全員が願ってきた。

当初は広い敷地に施設を分散させることを前提に進めてきたが、コスト面や使い勝手から敷地最上部を大きく削り、そこに一体化させることになった。広田湾への眺望を維持するために斜面下の杉や松を間伐しつつ、暗い林床に光を入れ、将来的に豊かになる落葉広葉樹の林へと誘導している。デッキは斜面の変化に沿って階段状に変化し、さまざまな居場所のバリエーションをつくっている。一端はカフェにそのまま接続し、もう一端を既存のケヤキ林へと貫入させることにより、段差以外にもさまざまな状況が生まれるように計画した。

現在は、各地から人が集い、宿泊・滞在型のワークショップが開催されている。誰でも気軽に立ち寄れるカフェやデッキテラスは、陸前高田の未来を担う世代のウェディング撮影にも使われた。

テラスからは広田湾への眺望が広がる。
next prev

Data

箱根山テラス

箱根山テラス

Hakoneyama Terrace
竣工2014年9月
規模6428.26㎡
住所岩手県陸前高田市小友町字茗荷1-232
業務内容 基本構想、基本計画、基本設計、実施設計、設計監理
施主株式会社箱根山テラス
協働建築:株式会社アイダアトリエ+名古屋市立大学久野研究室
構造:我伊野構造設計室(G.DeSIGN)
サイン:中川 たくま(ブルームーンデザイン事務所)
プランニング・ディレクター:有限会社リビングワールド
環境設備:株式会社ビオフォルム環境デザイン室
内装 :graf(有限会社デコラティブモードナンバースリー)
写真:吉田 誠、株式会社東海新報社、有限会社オンサイト計画設計事務所、有限会社グラム・デザイン
担当長谷川 浩己、丹野 麗子、亀山 本果(元スタッフ)
受賞歴JCD Design Award 2015(現・日本空間デザイン賞)銀賞[YK1.1]
ウッドデザイン賞2015 建築・空間分野 ソーシャルデザイン部門
COOL JAPAN AWARD 2015
メディア掲載『ソトコト』(木楽舎、2016年1月号)
『企業に広がる都市の木づかい』(日経BP社、2015年)
『ランドスケープデザイン No.102』(マルモ出版、2015年6月号)
『美術手帖』(美術出版社、2015年1月号)
関連リンク

Location

Back to Index