
敷地は陸前高田市の中心から程近い箱根山の中腹にある。市街地はほぼすべて津波で流され、現在は大規模な嵩上げ造成工事が進行していて見渡す限り工事現場のようである。プロジェクトは地元の方の熱意のもと「とにかく人が集まり何かを生み出していける場所を確保したい」と言う思いから始まった。純粋に民間の施設ではあるのだけれど、実はこの場所こそが本来の意味での公園/広場である。誰でも気軽に立ち寄れ、思い思いに時を過ごすことが出来る。1人でもいられるし、グループでも過ごせるし、いつも視線の端には他の誰かの姿も映っている。ともに同じ場所を共有してくつろいでいる事を楽しめる、今まさにそういう場所がこの地に必要だということを、この仕事を通じて教えられた。そこからこそ新しい動きや進むべき方向も見えてくるのではないか。デザインは至ってシンプル。広田湾を望む山の中腹に浮かぶ1枚の板が舟の甲板のように浮かんでいる。長さ50メートルに及ぶテラスは地形に合わせてステップしつつケヤキの林に突っ込んでいて、そこにたくさんの居場所のバリエーションを用意した。テラスの床は階段席、テーブル、カウンターなど自在にそのありようを変え、視界を遮る手すりを極力設けずに文字通り山の斜面に浮かんでいるような感覚を味わってほしい。いろんな居方が出来る、そういう場所であってほしいと願っている。



















Data

箱根山テラス
Hakoneyama Terrace
| 竣工 | 2014年9月 |
|---|---|
| 規模 | 6428.26㎡ |
| 住所 | 岩手県陸前高田市小友町字茗荷1-232 |
| 業務内容 | 基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | 箱根山テラス |
| 協働 | 建築:アイダアトリエ+名古屋市立大学久野研究室 プランニング・ディレクター:リビングワールド 構造:我伊野構造設計室(G.DeSIGN) 環境設備:ビオフォルム環境デザイン室 内装 :グラフ(デコラティブモードナンバースリー) サイン:青い月 写真:箱根山テラス、東海新聞社、オンサイト計画設計事務所 |
| 担当 | 長谷川 浩己、丹野 麗子、亀山 本果 |

