自然とともに生きるアクティビティガーデン

敷地は2haに及ぶ豊かな森林資源を有しているが、37棟あるログハウスは1990年代建設のもので老朽化が進んでいた。また、宿泊者のプライバシーに配慮するあまり、当初の生垣や植え込みが密集し、自然林の魅力が十分に引き出されていない状態だった。これらを総合的に改修・再利用することが前提条件となり、既存建物資産をいかした整備が行われた。
本計画の特徴は、自然のなかでの宿泊に加え、宿泊者が自ら植物や林地とかかわることによって、新たな気づきや心身のリフレッシュを味わえるプログラムにある。ハーブを用いたチェックインやカウンセリング、薪割り広場やタワーキッチンなど、体験型の空間を各所に設けることで、自然との多様な関係性を生み出している。
ログハウスには、バーベキューも可能な芝生の庭と、林に面したテラスを設け、宿泊者のプライベート空間の充実を図っている。さらに、新たに設置されたテント型宿泊施設では、快適な温熱・換気環境を確保しつつ、木漏れ日や月明かり、小雨の音といった環境の微細な変化に対する感受性が高まるような設計とした。膜構造に包まれることで、自然への気づきや感性の拡張が促される。
敷地内には、焚き火ガーデンやハーブ農園、芝生ガーデン、テラスエリアといった多様なアクティビティスペースが随所に配置されている。これらは単なる施設ではなく、「自分で選び、かかわり、創り出す」ための余白であり、訪れる人々の好奇心を自然へとつなぐ装置である。
また、都心から約1時間半というアクセスのよさは、週末のレジャーだけでなく、リモートワークやワーケーション、企業の自然研修といった新しい働き方や暮らし方の拠点としても活用が広がっている。自然を「消費する」のではなく「ともに生きる」という感覚を体感し、日常に持ち帰ることができる。













Data

リソルの森 グランヴォー スパ ヴィレッジ
| 竣工 | 2020年3月 |
|---|---|
| 規模 | 20,836㎡ |
| 住所 | 千葉県長生郡長柄町上野526−6 |
| 業務内容 | 基本構想、基本計画、基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | リソルの森株式会社 |
| 協働 | 建築:カプラ建築計画(タワーキッチン・リネン庫)、株式会社16アーキテクツ(温浴棟) 構造:株式会社KAP、太陽工業株式会社(膜構造) サイン:株式会社粟辻デザイン 電気設備:タクトコンフォート株式会社 機械設備:荻原 廣高(クールチューブ) 写真:吉田 誠 |
| 担当 | 三谷 徹、鈴木 裕治、須貝 敏如(元スタッフ)、本田 亮吾、張 立(元スタッフ) |
| 受賞歴 | IFLA Asia Pacific LA & Luminary Awards 2023 Built Projects - Cultural and Urban Landscape部門 Award of Excellence |
| 意匠登録 | テントキャビン意匠登録 登録第1684098号(2021年) |
| 関連リンク |

