周囲の山並みとつながる、微地形による居場所づくり

長野県立美術館/長野市立城山公園噴水広場

Nagano Prefectural Art Museum / Joyama Park
文化居場所をつくる広場・公園中部
「長野県立美術館」の敷地は、長野盆地の北西部、標高400〜415mのこんもりとした小山の一角にあり、横山信濃守の城跡とされる城山公園内にある。この場所は、観光客だけでなく、長年にわたり住民にも親しまれてきたエリアである。長野県立美術館の建て替えと隣接する噴水広場エリアの再整備にあたり、長野の歴史・風土・日常が交差するこの場所で、美術館と公園が一体となる空間づくりが求められた。
長野県立美術館/長野市立城山公園噴水広場

わたしたちは、誰もが自由に出入りできる「屋根のある公園」として、美術館と屋外の噴水広場を統合し、周囲の山並みを風景として取り込む新しい公共空間を目指した。敷地は、西に善光寺、東に健御名方富命彦神別神社(以下、彦神別神社)を望み、およそ10mの高低差がある。旧美術館前の噴水広場は、フラットに造成された円形の西洋式庭園で、上下の空間を分断する存在であった。

本計画では、美術館・善光寺・彦神別神社の3つが、建築やランドスケープを通じてつながるよう配置計画を行った。建築は地形に埋め込まれ、屋上利用も可能とし、東西南北どこからでもアクセスできる設計となっている。ランドスケープデザインでは、屋上広場や水辺テラス、外周歩道沿いのポケットパーク、のぼり庭、展望テラス、デッキ広場などを建築の各階と連動させて配置。建築とランドスケープが一体となった、複層的な回遊庭園のような空間を実現した。これによって、観光客から住民まで、誰もがそれぞれ自分のお気に入りの場所を見つけられるとともに、季節や時間の移ろいを楽しめる場所を目指した。

周辺とのつながりでは、これまで建築や樹木によって隠されていた、善光寺の背後にある美しい西部山地の山並みを借景として取り込み、空間に伸びやかさと広がりをもたせた。さらに基本設計段階では、敷地外である善光寺横の交差点や県道、彦神別神社横の市道にまで提案を広げ、城山公園全体の将来像を描いた。こうした取り組みにより、エリア全体で一体的なデザインの実現が可能になった。これまで個別に存在していた美術館や公園、彦神別神社、善光寺、さらにその背後に広がる山並みがつながり、ひとつの風景となって、日々訪れる人の心に残っていく。

Data

長野県立美術館/長野市立城山公園噴水広場

長野県立美術館/長野市立城山公園噴水広場

Nagano Prefectural Art Museum / Joyama Park
竣工2021年4月
規模約29,130㎡
住所長野県長野市箱清水1-7-1
業務内容 基本計画、基本設計、実施設計、実施設計監修、設計監理、設計管理協力
施主長野県、長野市
協働建築:株式会社プランツアソシエイツ、株式会社オープンヴィジョン
構造:株式会社KAP
照明:株式会社LPA
サイン:株式会社KMD
アート:中谷 芙二子 / 冨長 敦也
電気設備:株式会社森村設計
機械設備:株式会社森村設計
写真:吉田 誠
担当戸田 知佐、丹野 麗子、張 立(元スタッフ)
受賞歴第19回公共建築賞 優秀賞(2025年)
日本造園学会『ランドスケープ作品選集2024』
日建連表彰2022 第63回BCS賞
第34回長野市景観賞(2021年)
AACA賞2021
2021年度JIA日本建築大賞
第53回中部建築賞(2021年)
参加展示「長野県立美術館メイキング・ドキュメント つながる美術館 宮崎浩とランドスケープ・ミュージアム」
会期:2021年6月19日(土)〜8月15日(日)
会場:長野県立美術館
関連リンク

Location

Back to Index