駅前の風景を一新する緑の都市広場
「OMO7大阪」は、JR西日本の大阪環状線・新今宮駅駅前に立つホテルである。大阪を代表する観光地である新世界に近く、都市観光に適した立地でありながら日雇い労働者のまちとして知られる、あいりん地区に隣接している。この場所は約40年もの間、未開発の遊休地であった。あいりん地区は、かつてのネガティブなイメージから敬遠されがちだったが、近年では比較的安価な宿泊施設等の整備が進み、交通の利便性も高いため、バックパッカーなどが集うまちへと生まれ変わりつつある。

本計画は、ゆっくりと時間をかけてまちを明るく変貌させる契機となるよう、「まちにひらいた都市ホテル」を目指した。建物を北側へ配置し、駅に向かう圧迫感を抑えつつ、南側の大部分を緑の広場「みやぐりん」とすることで、駅前の緑地としてエリアの価値向上に貢献する計画とした。みやぐりんは、南側前面道路からゆるやかにホテル2階のラウンジ「OMOベース」へとつながっている。
ホテル2階は、駅のプラットフォームと同じ高さにすることで、南側前面道路の存在感をやわらげながら、駅との視線のつながりをつくった。これにより、駅と広場が互いに見合い、日常と非日常が交錯する場所になっている。
広場は、中央を芝生広場とし、その周りに座ったり寝転んだりできるデッキの縁台や、複数人で飲食などができるテーブルセット、ゆったりとくつろげるソファ・ラウンジチェアなど、さまざまな居場所を段状に配置することで、ステージと観客席のような谷状の構成とした。これによって、人々の視線は広場を介して自然に交わり、広場は多様なアクティビティの舞台となっていく。さらに、広場には柵や塀などを極力用いず、緑地や段差等をいかすことで、排他的に見えないように工夫した。将来的なまちへの開放度に応じて、物理的な出入りを段階的にコントロールできるようデザインしている。
2025年現在、開業から3年以上経過するが、さまざまな要因によって、広場はホテルとカフェ利用者以外には開放ができていない。少しずつ状況が変わり、最終的には、みやぐりんが駅前広場として、広く人々の居場所になることを願っている。












Data

OMO7大阪 by 星野リゾート
OMO7 Osaka by Hoshino Resorts
| 竣工 | 2022年4月 |
|---|---|
| 規模 | 13,907㎡ |
| 住所 | 大阪府大阪市浪速区恵美須西3-16-30 |
| 業務内容 | 基本計画、基本設計、実施設計監修、設計監理 |
| 施主 | 株式会社星野リゾート |
| 協働 | 建築:株式会社日本設計、有限会社東 環境・建築研究所、岩田尚樹建築研究所 構造:株式会社日本設計 照明:アカリ・アンド・デザイン サイン:株式会社粟辻デザイン 電気設備:株式会社日本設計 機械設備:株式会社日本設計 運営・マネジメント:株式会社星野リゾート |
| 担当 | 長谷川 浩己、鈴木 裕治、丹野 麗子、張 立(元スタッフ)、本田 亮吾、大林 万里江(大林ランドスケープ設計事務所) |
| 受賞歴 | 土木学会デザイン賞2023 優秀賞 第42回大阪都市景観建築賞 緑化賞・建築サイン・アート賞(2023年) JIA優秀建築選2023 一般社団法人照明学会 関西支部照明施設奨励賞(2023年) 照明デザイン賞(2023年) |
| 関連リンク |




