
「星のや沖縄」の全体イメージは、沖縄の伝統的な城郭(じょうかく)である「グスク」の構造から着想を得ている。海岸線に対して大きなボリュームの空間を出現させるのではなく、建物はなるべく低層に抑えつつ、既存の海岸地形や自然環境に溶け込むように配慮している。海岸側にあたる西側は全室オーシャンフロントの客室群を配置し、東側には高さ4.5mのPCウォール(プレキャストコンクリート製の壁)をグスクの石積みに見立てた。それらで大きく囲い込むことによって、台風や強い潮風といった過酷な自然条件から守られた、落ち着いた内部空間を形成している。
囲まれた空間の内部には、沖縄に馴染み深い果樹や草花の庭、畑、林、そしてそれらを巡る散策路を設けることで、沖縄の風土を五感で感じながら滞在できる空間を創出した。一方、プールや道場前などのパブリックスペースは、海に向かって大きくひらかれた構成で、客室空間では得られないスケール感や海との一体感を味わえるようにデザインしている。
隣接する「バンタカフェ」は、宿泊者以外の観光客も立ち寄ることができる、ひらかれた場所である。半円状に広がる崖地「バンタ」の自然な地形をいかし、多様な過ごし方ができる居場所を点在させている。海辺のテラスでは、既存の海浜植生を保全しつつ、緑に包まれるように配置した。琉球畳をモチーフとした屋外の畳敷のテラスでは、訪れる人がゆったりとくつろげるプライベートな空間となることを目指している。また、岩場のテラスは、大きな岩と自生植生に囲まれた秘密基地のような場所で、森のなかに潜り込んでいく、胸が高鳴るような体験をイメージした。
本計画では、沖縄の自然と文化に寄り添い、土地固有の地形や植生を読み取りながら、その風景に静かに溶け込むデザインを目指した。この場所でしか得られない自然との結びつきを通して、訪れる人々が沖縄の海岸風景の新たな魅力に触れることを願っている。




















Data

星のや沖縄/バンタカフェ
| 竣工 | 2019年11月 |
|---|---|
| 規模 | 125,443.32㎡ |
| 住所 | 沖縄県中頭郡読谷村義間474 |
| 業務内容 | 基本計画、基本設計、実施設計、設計監理 |
| 施主 | 株式会社読谷ホテルマネジメント、株式会社沖縄うみの園 |
| 協働 | 建築:有限会社東 環境・建築研究所 構造:株式会社KAP 照明:有限会社ICE都市環境照明研究所 サイン:岩松 亮太 電気・機械設備:株式会社ハルス建築環境設計 写真:吉田 誠 |
| 担当 | 長谷川 浩己、鈴木 裕治、原 行宏、生田 美菜子、本田 亮吾、張 立(元スタッフ)、金井 幸雄(カナデ設計事務所)、木村 直樹(KUM一級建築士事務所) |
| 受賞歴 | 日本造園学会『ランドスケープ作品選集2022』 第1回 Travel+Leisure Luxury Awards Asia Pacific 2023(日本) Beach+Upcountry Hotels部門 入賞、Hotel Pools部門 1位 |
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