里山の魅力をいかした公園のような動物園

盛岡市動物公園 ZOOMO

Morioka Zoological Park
文化風景のなかの屋根広場・公園東北
市街地から車で約10分の距離にある「盛岡市動物公園 ZOOMO」は、都市と山地の間に挟まれた豊かな自然環境に囲まれ、いわば「里山」のような中間領域にあたる。1989年に開園し、2016年には来場者が累計500万人を達成するなど地域に親しまれてきたが、年を追うごとに施設の老朽化やレジャーの多様化などによって利用者が減少し、民営化とともにリニューアルを行うことになった。
盛岡市動物公園 ZOOMO

新しい園の理念は、「人、動物、環境(生態系)の健康は相互に関連していてひとつである」という意味の「One World-One Health」。本計画では、里山の自然環境のなかにあるという立地的な特徴を最大限いかしながら、動物園の展示空間を見直し、多様な滞在空間をつくることとなった。こどものための遠足の場という従来の動物園のイメージから、誰もが滞在を楽しめる「公園」のような場になることを目指している。また、ローカルな野生動物が現れる豊かな里山の自然環境のなかで、グローバルな動物たちの存在と地域の生態系を重ね合わせる、ローカルとグローバルが交差する風景を通して、多層的な気づきと体験を生み出したいと考えた。

本計画を実現するために、「ZOO LOOP(動物観察ルート)」と「NATURE LOOP(自然観察ルート)」という2つの大きな順路を設定した。ZOO LOOPでは日本やアフリカやカナダなど世界の動物を、NATURE LOOPでは森のなかを歩きながら、在来の動植物などこの土地の自然環境を楽しめるよう動線を計画した。それぞれのゾーンの個性を際立たせるために既存林を間伐し、視線が抜けるような風景を設計。道そのものが動物たちの暮らしのなかを縫っていくようにあえて道を細く蛇行させ、里山の自然風景を楽しみながら、思いがけない動物との出会いに心が躍る空間となっている。

また、順路上にはテラスやベンチ、東屋などの座れる場所を随所に設け、滞在の余白をつくることで、訪れる人々がその場に留まり、環境とじっくり向き合えるよう工夫した。動物を眺めながら過ごすことができるだけでなく、動物のいない場所もまた、快適な居場所として過ごせるパブリックスペースとなっている。

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Data

盛岡市動物公園 ZOOMO

盛岡市動物公園 ZOOMO

Morioka Zoological Park
竣工2023年4月
規模372,000㎡
住所岩手県盛岡市新庄字下八木田60-18
業務内容 基本計画、基本設計、実施設計、設計監理
施主盛岡市、株式会社もりおかパークマネジメント、盛岡市動物公園再生事業株式会社
協働建築:一級建築士事務所エル・ケー・デザインオフィス
構造:リズムデザイン構造計画事務所
サイン:株式会社ライト・ア・ライト
写真:吉田 誠
担当長谷川 浩己、須貝 敏如(元スタッフ)、前田 智代、張 立(元スタッフ)
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