心を落ち着ける奥行き感を演出する、山麓のランドスケープ

伊豆の国市斎場 梛の杜

Izunokuni City Funeral Hall “NAGINOMORI”
文化地形を読む東海
「伊豆の国市斎場(愛称:梛の杜)」は、富士山を正面に望む、緑豊かな山麓に位置している。火葬の場としてだけではなく、この地で暮らしてきた人々が、馴染みある富士山のある風景や土地の記憶に包まれながら、大切な人と静かに向き合える場を目指した。建築設計を行った山下設計が建物のボリュームを分割し、軒高を低く抑えたことで、周囲の景観に配慮した建築計画となっている。
伊豆の国市斎場 梛の杜

まず建物を中心に、前庭、すり鉢広場、林地の地形差をいかした段差のある構成とすることで奥行きをもたせ、訪れる人々が自然と心を落ち着けられる環境を整えた。それぞれの空間が穏やかに切り替わる構成により、山麓の自然と調和した空間が生まれている。

前庭は、壁などの構成によって富士山の遠望をフレーミングして印象的に見せつつ、庇(ひさし)や歩道、ツツジの刈り込み、並木などを設け、さらに駐車場を奥に配置したことで、落ち着いたアプローチ空間とした。そして、建物内の待合室に入ると、正面に雄大な富士山とともに街並みが広がり、すり鉢広場を前景として、この土地の風景の成り立ちをより一層意識することができる。

待合室から見て富士山の前景にあるすり鉢広場は、地下に調整池があり植栽ができないため、広場の中央にペット慰霊モニュメントを設置し、ペットとの別れを受け止める場とした。そこから待合室まで回遊性のある動線を確保することで、故人やペットを想いながら、歩いて心を整えられるようにデザインした。徐々に静かに心を落ち着かせるランドスケープ空間と建築のつながりによって、訪れる人々が穏やかに過ごせる環境を生み出す。ここから望む富士山が、故人との最期の時間をより深く心に刻む場所となることを願っている。

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伊豆の国市斎場 梛の杜

伊豆の国市斎場 梛の杜

Izunokuni City Funeral Hall “NAGINOMORI”
竣工2021年2月
規模約25,000㎡
住所静岡県伊豆の国市韮山多田979-1
業務内容 基本設計、実施設計、設計監理
施主伊豆の国市
協働建築:株式会社山下設計
照明:有限会社ライトデザイン
サイン:氏デザイン株式会社
写真:有限会社オンサイト計画設計事務所
担当三谷 徹、原 行宏、鯨岡 栞(元スタッフ)
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